そのメリット・デメリットから施工方法まで徹底解説
建物の寿命を延ばし、快適な住環境を維持するために欠かせないのが防水工事です。数ある防水工法の中でも、特に多くの場所で採用されているのが「ウレタン防水」です。
しかし、「ウレタン防水」という言葉は聞いたことがあっても、具体的にどのようなものか、他の工法とどう違うのかを正確に理解している方は少ないかもしれません。
この記事では、ウレタン防水の基本から、そのメリット・デメリット、そして具体的な施工方法までを詳しく解説します。
これから防水工事を検討している方、ウレタン防水について詳しく知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
ウレタン防水の基礎知識
ウレタン防水とは、液状のウレタン樹脂を塗布して防水層を形成する工法です。
このウレタン樹脂が硬化することで、ゴムのような弾力性のあるシームレスな防水膜ができます。
ウレタン防水の最大の特徴は、複雑な形状の場所や、狭いスペースでも継ぎ目のない一体型の防水層を形成できる点にあります。
この柔軟性と高い密着性により、バルコニー、屋上、ベランダ、階段、室内の水回りなど、多岐にわたる場所で利用されています。
ウレタン防水には大きく分けて2つの工法があります。
密着工法:下地に直接ウレタン樹脂を複数回塗り重ねて防水層を形成する工法です。
下地と防水層が完全に密着するため、密着性に優れており、比較的安価で施工できるのが特徴です。
主にベランダやバルコニーなどの小規模な場所に用いられます。
通気緩衝工法:下地との間に「通気緩衝シート」と呼ばれるシートを敷き、その上からウレタン樹脂を塗布する工法です。
下地と防水層の間に隙間をつくり脱気筒を設けることで、下地から発生する湿気を逃がし、防水層の膨れや剥がれを防ぐ効果があります。
特に、屋上など広い面積の場所や、下地にひび割れが多い場合に適しています。
密着工法に比べてコストは高くなりますが、耐久性に優れています。
ウレタン防水のメリット
ウレタン防水が広く普及しているのは、多くのメリットがあるからです。主なメリットをいくつか見ていきましょう。
1. 複雑な形状に対応できる
ウレタン防水は液状の材料を塗布するため、L字型の隅や立ち上がり部分、配管周りなど、複雑な形状の箇所にも簡単に施工できます。他の防水工法のようにシートを貼り合わせる必要がないため、継ぎ目がなく、水が浸入する隙間を最小限に抑えられます。これにより、高い防水性を実現できます。
2. 軽量で建物への負担が少ない
ウレタン防水材は非常に軽量です。特に、アスファルト防水やFRP防水などと比べると、建物にかかる重量の負担が少ないため、建物の構造に影響を与えにくいというメリットがあります。古い建物や、耐震性を考慮する必要がある建物にも安心して使用できます。
3. メンテナンスが比較的容易
ウレタン防水は、定期的なトップコート(保護材)の塗り替えで、防水層の性能を維持できます。防水層自体に大きな問題がなければ、表面のトップコートを塗り直すだけで済むため、全面的な改修工事に比べて費用や工期を抑えられます。ただし、このトップコートは紫外線から防水層を守る重要な役割を担っているため、定期的な点検とメンテナンスが不可欠です。
4. 費用対効果が高い
アスファルト防水やシート防水と比較して、ウレタン防水は初期費用が比較的安価です。高い防水性を確保しつつ、コストを抑えられるため、費用対効果に優れています。また、前述の通りメンテナンスも比較的容易であるため、長期的な視点で見ても経済的な選択肢と言えます。
ウレタン防水のデメリット
多くのメリットがある一方で、ウレタン防水にもいくつかのデメリットがあります。これらを理解しておくことで、後悔のない選択ができます。
1. 職人の技術力に左右される
ウレタン防水は、職人が手作業でウレタン材を塗布して仕上げるため、その仕上がりが職人の技術や経験に大きく左右されます。均一な厚みでムラなく塗布する技術が求められるため、経験豊富な信頼できる業者に依頼することが非常に重要です。
2. 乾燥に時間がかかる
ウレタン樹脂が硬化するまでには、ある程度の時間が必要です。特に、梅雨時期など湿度が高い環境下では、乾燥が遅れる場合があります。この乾燥時間を確保しないまま次の工程に進んでしまうと、防水層の品質が低下する恐れがあります。施工中は、その場所を立ち入り禁止にするなどの注意が必要です。
3. 紫外線に弱い
ウレタン防水層そのものは、紫外線に弱く、劣化しやすい性質を持っています。そのため、通常はウレタン層の上にトップコートと呼ばれる保護材を塗布します。このトップコートが紫外線から防水層を守るバリアの役割を果たします。トップコートは経年劣化するため、定期的な塗り替えが必要となります。このメンテナンスを怠ると、防水層が剥がれたり、ひび割れが生じたりして、防水性能が低下する原因となります。
4. 強い臭いが発生する
ウレタン防水材は、施工時に独特の強い臭いを放ちます。この臭いは、溶剤が揮発する際に発生するものであり、施工後も数日間は残ることがあります。特に、住宅のベランダやバルコニーなど、生活空間に近い場所で施工する際は、事前に近隣住民への配慮や換気対策を検討する必要があります。
ウレタン防水の施工プロセス
ウレタン防水工事は、単にウレタンを塗るだけでなく、いくつかの重要な工程を経て完成します。一般的な施工の流れを見ていきましょう。
1. 下地処理
最も重要な工程の一つです。既存の防水層の撤去や清掃を行い、ゴミやホコリ、古い塗膜などを丁寧に取り除きます。ひび割れや凹凸がある場合は、専用の補修材で平滑に均します。この下地処理が不十分だと、いくら良い材料を使っても、防水層が剥がれたり、不具合が生じたりする原因となります。
2. プライマー塗布
下地が整ったら、プライマーと呼ばれる下塗り材を塗布します。プライマーには、下地とウレタン防水材との密着性を高める役割があります。接着剤のような役割を果たすため、この工程も非常に重要です。
3. ウレタン防水材の塗布
プライマーが乾燥した後、いよいよウレタン防水材を塗布します。一般的には、2〜3回に分けて塗り重ねることで、規定の厚みを確保します。均一な厚みでムラなく塗ることが、高い防水性能を確保するための鍵となります。
4. 補強材の設置(必要に応じて)
立ち上がり部分や入隅・出隅(コーナー部分)など、特にひび割れやすい箇所には、補強用のクロスやメッシュシートを貼り付け、その上からウレタン防水材を塗布することで、さらに防水性を高めます。
5. トップコートの塗布
ウレタン防水材が完全に硬化したら、最後にトップコートを塗布します。これは、前述の通り、紫外線や雨風から防水層を保護するための仕上げの工程です。トップコートには、防水層の保護だけでなく、美観を向上させる役割もあります。
費用と耐用年数
ウレタン防水の費用は、施工面積、工法(密着工法か通気緩衝工法か)、下地の状態、使用する材料などによって大きく変動します。一般的な目安としては、1平方メートルあたり4,000円から9,000円程度が相場とされていますが、正確な費用は必ず複数の業者から見積もりを取って確認しましょう。
耐用年数は、一般的に8年から12年程度と言われています。しかし、これはあくまで目安です。日当たりの良さ、雨風の影響、定期的なメンテナンスの有無などによって、耐用年数は大きく変わります。トップコートの塗り替えを5年ごとに行うなど、適切なメンテナンスを行うことで、防水層自体の寿命を延ばすことができます。
まとめ
ウレタン防水は、液状のウレタン樹脂を塗布して防水層を形成する、柔軟性と密着性に優れた防水工法です。複雑な形状の場所でも継ぎ目のない一体型の防水層を作れること、軽量で建物への負担が少ないこと、メンテナンスが比較的容易であることなど、多くのメリットがあります。
一方で、職人の技術力に左右されること、乾燥に時間がかかること、紫外線対策としての定期的なトップコートの塗り替えが必要であることなど、いくつかのデメリットも存在します。
防水工事を検討する際は、これらのメリット・デメリットを十分に理解し、建物の状態や予算、求める性能に合わせて最適な工法を選択することが大切です。信頼できる業者に相談し、複数の見積もりを比較検討しながら、ご自宅に最適な防水工事を進めてください。適切な防水工事は、大切な家を長持ちさせ、安心で快適な暮らしを守るための重要な投資です。
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